仮想通貨やNFTを調べたときによく出てくるERCという言葉。
ERCはブロックチェーンの技術用語(トークンの規格を表す概念)なので、ERCについて理解することが難しいと感じる人も多いことでしょう。
特にERCにはERC-20やERC-721などのさまざまな種類があるので、ますます混乱を招きやすいのが現状です。
そこでこの記事では、
・そもそもERCとは何なのか
・ERCの代表的な種類とそれぞれの特徴
について解説します。
ちなみに弊社運営のNFTマーケットプレイス「LEAD EDGE」で使用しているERC-721という共通規格についてもしっかりと説明していきます。
ERCとは?
ERCとは、イーサリアムチェーンの仮想通貨やNFTに使われる規格(トークンの機能についての共通の決まり事)のことです。
ERC(Ethereum Request for Comments)はイーサリアム技術提案と訳され、エンジニアの開発コストを抑えるために作られました。例えば、ERC-1155のトークンはトークンを複数同時に送信可能というように、規格ごとに特別な機能が備わっています。
現在ではERCを利用したスマートコントラクトの開発が一般的です。これからはERCが便利な理由について紹介します。
ERCは何が便利なのか
ERCがあると便利な点
- ウォレットの管理がしやすくなった
- 暗号資産やNFTの開発がしやすくなった
順を追って説明します。
1.ウォレットの管理がしやすくなった
暗号資産の管理にはメタマスクなどの暗号資産ウォレットが必要です。
従来、暗号資産ウォレットに新しい暗号資産を対応させるためには、暗号資産とウォレットの互換性を合わせるために開発者が新しくコードを書く必要がありました。なので1つの暗号資産を開発するだけでもかなりのコストがかかっていたのです。
しかし今ではERCに準ずる暗号資産を作成することによって、暗号資産ウォレットに暗号資産を追加しやすくなりました。
MetaMaskに関しては「MetaMask(メタマスク)とは?Chromeへのインストール方法や初期設定、使い方を完全解説」の記事をご参考ください。
2.暗号資産やNFTの開発がしやすくなった
イーサリアムのブロックチェーン上では、暗号資産やNFTを開発するときにSolidityと呼ばれるプログラミング言語を使って開発します。
ERCの誕生前は統一された規格がなかったため、暗号資産やNFTなどのスマートコントラクトを開発することが難しかったのです。
現在では一般的な規格ができたため開発コストが減り、スマートコントラクトを開発できるエンジニアを雇用しやすくなりました。
代表的なERCの標準規格
ここからは代表的なERCの標準規格について紹介していきます。
ERC-20という代表的な共通規格だけでなく、ERC-721Aといった2022年に作成された規格についても解説していきます。
ERC-20
ERC-20とは、暗号資産に最も使われている規格です。
2015年の11月に作成された規格で、イーサリアムが開発されてから約2年後に作成されました。
ERCはイーサリアムブロックチェーンに対応した規格になっており、ビットコインには対応していません。ただ、PolygonやAvalancheといったブロックチェーンではEVM(イーサリアム仮想マシン)互換性があるため、ERCに対応する場合があります。
✓ ERC-20の特徴
ERC20の特徴
- 暗号資産を発行することができる
- トークンの送受信ができる
暗号資産に必要最低限の機能だけが入っています。
また、ERC-20の代表的なコインについてはこちらです。
ERC-20の代表的なトークン
- バイナンスコイン
- 米ステーブルコイン
- JPYC
ERC-223
ERC-223とは、ERC-20の問題を解決するために生まれた規格です。
そもそも、イーサリアムには
- ウォレットアドレス
- スマートコントラクトアドレス
という2つのアドレスがあります。
暗号資産はウォレットアドレスに対して送金しますが、ERC-20のトークンを誤ってスマートコントラクトアドレスに送金してしまうと暗号資産が取り出せなくなります。
そういった問題を改善するために生まれた規格がERC-223です。
また、仮想通貨の送金で通貨を失くしてしまうことを「セルフGOX」といいます。詳しくは「【大損注意】仮想通貨のGOX(ゴックス)とは?セルフGOXを防ぐ方法を解説」という記事をご覧ください。
✓ ERC-223の特徴
ERC-223の特徴は以下の通りです
ERC-223の特徴
- ERC-20と互換性がある
- ERC-20よりも手数料が安い
- 暗号資産を失ってしまうリスクを減らしてくれる
ERC-223はERC-20の上位互換モデルといえますが、ERC-20が普及しているなどの理由からあまり普及していません。
ERC-721
ERC-721とは、NFTによく使われる規格です。
NFT(Non-funzible Token)とは、世界にひとつだけのデジタル資産のことをいい、写真や音楽といったデジタル情報を所有することができます。
✓ ERC-721の特徴
ERC-721はNFTを作成することができます。
ERC-721にはトークンIDと呼ばれるトークンを識別するための番号があり、それによって各トークンが唯一無二であることを保証します。
ERC-721A
ERC-721Aとは、NFTプロジェクトであるAzukiが開発した共通規格です。
Azukiとは今年の1月にリリースされたNFTプロジェクトで、オーバーウォッチを手掛けたキャラクターデザイナーがグラフィックを担当しています。
高クオリティのコレクティブアートで、リリース2週間後に120ETHの二次流通が発生したことで話題になりました。
Azukiの公式サイト
https://www.azuki.com/
✓ ERC-721Aの特徴
ERC-721Aは、作品を1枚ミントしたときのガス代で作品を複数ミントすることができます。
このことによってPolygonといったガス代が安いチェーンを使わなくても、利用者が作品を複数枚購入しやすくなりました。
現在では、国内プロジェクトであるNEO TOKYO PUNKSやNEO Samurai Mokeysなどのプロジェクトでも採用されています。
ERC-721Aに関してはこちらの公式サイトをご覧ください。
ERC721A
https://www.erc721a.org/
ERC-948
ERC-948とは、イーサリアム上でサブスクリプションモデルを実現した規格のことです。
今まではNFTの購入や送金といった機能は単発の処理しかできませんでしたが、ERC-948のおかげで継続的に処理も行うことができるようになりました。
しかし、利用者の残高不足などやブロックチェーン上のサブスクリプションサービスがあまりないことから使用頻度はあまり高くないようです。
ERC-948の作成方法についてはこちらの記事をご覧ください。
Subscription Services on the Blockchain: ERC-948
▶ https://consensys.net/blog/blockchain-explained/subscription-services-on-the-blockchain-erc-948/
ERC-1155
ERC-1155とは、シンガポールのブロックチェーン企業であるENJINが作成した規格です。
ERC-1155は別名マルチトークンスタンダードと呼ばれ、ERC-20とERC-721の両方の特徴をもちます。
OpenSeaでは2019年9月からERC-1155が利用できるようになりました。
✓ ERC-1155の特徴
ERC-1155に関する特徴は以下の通りです
ERC-1155の特徴
- NFTとFT(ファンジブルトークン)を発行することができる
- 複数のトークンを一度に送信することができる
ERC-1155では、NFTの他にも暗号資産を作成することができ、ENJIN社のガバナンストークンであるEnjinコインはERC-1155で作成されています。
また、ERC-1155の作成方法に関してはこちらの記事をご確認ください。
「ERC1155に準拠した独自コントラクトの作り方」
▶https://zenn.dev/ryo_takahashi/articles/53d1f9abb2eecd
おわりに
最後に今回紹介した代表的なERC規格についてまとめておきます。
- ERC-20:イーサリアムの代表的な暗号資産に使われている規格
- ERC-223:ERC20の上位モデル
- ERC-721:NFTの代表的な共通規格
- ERC-721A:ガス代を抑えることができる
- ERC-948:サブスクリプションモデルに使える
- ERC-1155:ERC-20とERC-1155の特徴をあわせもつ